さよならプーサン

キクチマサノブさんが亡くなって、さすがにそろそろ何か書いておこうとPC開いたら、ヤフー速報に相倉久人の訃報が。先日のオーネット・コールマンといい、ジャズの「時代」を作った人たちが次々と亡くなり、まるで、もうジャズの時代は完全に終わったんだよとでも言われているようだ。もっともこの人たちの名前は、訃報でもなければ最近はあまり顧みられていなかったのかも知れない。若い頃は熱狂的なプーサンファンだった私でさえ、最近の音楽の動向や、ご病気であったことさえ知らなかったのだから。

訃報を8日の朝刊で知った時、キヨシローが死んだ時ほどのショックはなかった。ここ数年、私はプーサンの訃報がそう遠くない内に載るような気が何度もしていて、心の準備ができていたというか、とうとう来たか…という感じだった。その後、職場に向かう車の中で、彼の音楽というより、31歳の憧れのミュージシャンと18歳の小娘だった自分との、小さないくつかの思い出を甦らせていた。ちょっとした会話やその時の表情、乾いた掌の感触、厳しい言葉…若い時の切なくもイタイ思い出が後から後から追いかけて来た。あの頃、プーサンは私のすべてだった。寝ても覚めてもプーサンだった。

最後にライブを聴いたのは、ずいぶん昔の話だ。六本木のピットインで、なぜか彼は若い外人の女の子達(グルーピー)に囲まれていた。赤坂で偶然すれ違ったこともあった。すれ違うと同時に気づいて振り返ると、やはりプーサンだった。でも、どの時も話しかけられなかった。

さて、音楽は何をお勧めしよう。いかにDancing Mistが名曲とて、さすがに今聴くのはどうかと思う。スストならまだ大丈夫ではないかと思うが、どうか。重くても、魂のこもった静謐な音が良ければ、トリオやソロ作を。

プーサン、色々ありがとうございました。そして、すみませんでした。いつかあの世で、また素晴らしい音楽を聴かせてください。