日野てるまささんの

中学生ドラマー引っ叩き事件についてのメディアの反応は、平日の昼間はテレビ見れないので今週のサンデージャポンで初めて見たんだけど、驚いたことに太田光だけが否定的だった。私は最初、その「事件」の様子はヨウツベの小さい画面で見ただけだったので、画像も音も不鮮明でよく分からなかった。その時点では、日野さんは自分が子供の頃にお父さんに引っ叩かれてトランペットを仕込まれて来たから別に悪いとは思っていないんだろうな、だから人前でも平気でできるんだろうなということぐらいだった。

でも、テレビで画面も音声もクリアなものを見たら、こりゃあちょっとヒドイなと。引っ叩いたことより、髪の毛を掴んで揺すった時のほうが暴力的に見えた。あれを見ても、西川先生すら非難しなかったことにオドロいた。私はほとんどの場合なぜか太田光と意見というか感覚が近いのだが、今回もそうだった。百歩譲って、まぁやってしまったことは仕方がないとしても、それが「文化」だとか、「何が起こるか分からない、それがジャズだ」とか、そういうことは言っちゃイケないんじゃないの。特別な才能があるからこそ自分の息子のように思ってやった、みたいなのもねぇ。じゃあ、他の子の立場はどうなるのよ。本当の親御さんの気持ちは?表向きは息子が悪いって言ってるけど、本音は分からないじゃない。丸く収めたいからそう言っているだけかも知れないよ。

私に初めてジャズの魅力を教えてくれた日野さんだからこそ、とても残念。高校2年の時、確か学校を早引けして家に帰り、テレビの前を通り過ぎようとした時に、当時注目を浴びていた日野さんのバンドの音がテレビから流れてきて、雷に打たれてように衝撃を受けた。そしてすぐにアルバイトを始めて、最初の給料で買ったのが日野さんの「HI-NOLOGY」というアルバムだった。暫くして、県庁所在地でのコンサートにも、確か友達と一緒に行った。日野さんがいたからこそマイルスにも出会うことができたのだと思う。

上京してからほどなく、銀座のジャズクラブでアルバイトをした時は、日野さんも出演していた店だったから親しくお話をしたこともあった。レコードを聴いたり雑誌の記事を読んだりしていた時はクールな人なのかなと思っていたけど、会ってみるとちょっとガッカリするくらい単純な(失礼)感じで憧れはなくなったが、その分、率直でいい人だな、ちょっと軽いけど、という感じだった。ライブでは、時には涙が出るほど感動できる真摯な演奏ぶりの時と、やたら恰好つけて饒舌なだけの時と、結構波があったように思う。今回も、その良くない波の日だったのだろうか。その子が生意気で、演奏の輪を乱すから思わず手が出たんなら、そう言えばいいじゃないの。文化だのなんだのってカッコつけるからいけないんだよ。

でもねぇ、それがジャズだとは言わないけど、ジャズの現場では結構あるみたい。いつか渋谷のジャズライブで、今は亡き本田タケヒロさんトリオを聴いていたら、ベースとドラムが合わなくて、殴り合い寸前になってたもんなぁ。その日じゃないけど、実際殴り合ったこともあったみたい。私はそのドラムが大嫌いで、本田さんはなんでこんなドラマーとやってるんだろうって思ってたんだけど。その後、別のバンドでそのベースの人とはずっと共演していたから、やっぱりドラムを外したんだなと思ったけどね。もっと早く外せなかったのかな、って。

自分の仕事でも、一度だけピアノと揉めたことがあるなぁ。歌伴って難しいと思うんだけど、わざと音をぶつけているとしか思えなかったから。でも、私は譜面がそんなに読めないから自分の感覚でしかなくて、説明しろといわれても出来ない。ただジャズって、例えば前奏が何小節なんて決まっていないから、4小節で出なきゃいけないこともあれば、半コーラス弾いちゃうピアノも居て、コードの流れを感じながらでしか入れない。ベテランの歌手でも、その感覚がない人だと妙なところから入ってしまっているところを見たこともある。そういうこともあって、自分の感覚は絶対的なのだよね、譲れない。そして、おそらく一人一人がそういう感覚を持っているから、譲れない×譲れないでケンカになっちゃうんだよなぁ。