初めての被告

ところで、旅の直前に妙なものが郵送されて来た。○○法律事務所の弁護士なる人から、「(聞いたこともない)某氏により不動産の所有権移転登記について訴訟を提起されており、出頭を求める旨の書面が届くが、異議がない場合には出席の必要はない、不明な点があれば問い合わせて欲しい」などという通知文だ。つまり、こちらが被告人として訴えられているのだという。

これはまた新手の悪質ないたずらだなと思い、消費者生活相談センター?あたりに問い合わせてみなければと思っていたところ、その翌日には大阪の地方裁判所から、私だけでなく姉達も一緒に「被告」となっている「訴状」が実際に書留で届けられ、くりびつてんぎょうだった。

訴状という何十頁にもわたる書面をよくよく見てみると、「原告」は父方の遠〜〜〜い親戚の人で、その人の母が平成7年に亡くなって、法定相続人である原告を含めた家族の間で、土地と建物の総てを原告が取得するという遺産分割協議が成立しているのだが、法律上その他の縁者にも所有権があるため、原告の所有を認めるという「所有権移転登記手続き」をするよう求められているようだ。そして、60数名いる相続人目録とともに、詳しい家系図が載っていた。

以前ここにも書いたかと思うが、父方とはほとんど付き合いがなかったため出自についてはよく分かっていなかったので、この家系図は大変興味深かった。それによると、昔、私んちに転がり込んで居候をした挙げ句、金を持ち逃げして芸者と駆け落ちしたという父のタネ違いの弟は、一昨年亡くなったということだった。とても高級な靴を作る職人だったと聞いていたので一度会ってみたいと思っていたのだが、そうか。亡くなっておられたのだな。

そして、「タネ違い」と言えば確かにそうなのだが、どうもタネどころか、腹も違っているらしかった。というのも、靴職人である義弟の母親の名前ははっきり記されており、その方は祖父と再婚であり、前夫と祖父との間で計4人の子供を産んでいるのだが、その内、どの人が祖父との子だかは不明となっているのだ。そして、その4人の中に父は含まれていない。私の父から祖父に引かれている線(直系)は一本だけであり、祖母の名前は書かれてない。また、祖父の出生年月日のところには「死亡日不明(戸籍破棄)」と書かれてある。他の方達はほとんどその名前が生年・没年月日とともに四角く囲まれているのに、祖父のそれは四角の一端が囲んでないのである。さては祖父が外にオンナを作って産ませた子であったのだろうか父は。だから小さい時から養子に出されたりして苦労して来たのか。あるいは祖父も再婚で、姓名不明の初婚の相手との間に父が産まれた可能性もあるが。

ともあれ、そんな父の流れを汲む私たちなのだから、いわばその「原告」さんからはほとんど何のゆかりもないようなものだが、それでも法的にはなにがしかの権利があるから、こんなものが送られて来たのだよなぁ。

正直、その残された土地や建物というのは今の金銭感覚からすると笑ってしまうほどの小額だし、元よりそんな遠い親戚のヒトの財産分与を請求するつもりは露ほどもないのだが、それでもその登記移転手続きとやらをせねばならぬのだよなぁ。メンドくさっ。

それに、もっと気になるのは、その訴状の始めに「訴訟費用は被告らの負担とする」と書かれてあること。はぁ?何も悪いことしてないのに、訴えられた挙げ句、訴訟費用を払うんですかい?

まぁ、それら諸々のことについては、公的な法律相談所にでも行って聞いてくることにしようと姉達と話しているのだけれど、とんだ薮から棒だわ。人生って、なにがあるか本当に分からないものだなぁ。