大連三日目

今回の旅は三泊四日だったのだけれど、二泊三日でも良いのではないかと思っていた。でも実際に来てみると、二日目の夜は、やはりまだ帰りたくないなと思った。ところが、三日目の朝目覚めたとたんに、もう帰りたいと一瞬思ってしまった。ワタシにとってこの旅は非常に有意義なことは確かなのだが、ここに住む人びとの暮らし振りを考えると決して手放しで楽しいと言えるものではなく、三泊ぐらいが限界かも知れない。

さて、朝早く起きてまた列車に乗って大連に戻るのだが、今回は行きの列車で同席した二十代後半の女性とそのご両親の間にお邪魔する格好での四人掛けとなった。お父さんはたいへんザックバランな方で、自分は仕事で何度も海外に来ていたが、妻の方は五人の子育てで忙しくどこにも連れて行ったことがなかったので、定年を迎えてから「罪滅ぼし」としてあちこち連れて行っている、と言われる。この五月にも三人で屋久島に行って来られたとか。でも、縄文杉を見るには往復12時間ぐらい歩かないといけないらしく、ご夫婦は途中までしか行かず、娘さんだけ行かれたとか。そいういえば、潤くんは嵐ちゃんのマネキンファイブ屋久島ルックを披露しただけでなく、実際に行ったとどこかで読んだが、そんなに歩いたのかしら?

このお父さんには、細長い風船で色々なものを作る特技があり、私たち一行の十歳の女の子にも初日のバスの中でミッキーマウスを作ってあげていたけれど、この列車の中でも中国人の子供にその場でさっとネズミを作ってプレゼントしていた。驚いた顔で受け取る子供と感謝で笑顔満面の若い父親、どういたしましてと笑っているお父さんと私たち取り巻き。まさに「日中友好」の図である。そういえば私も初日の足裏マッサージの女性に「ハイチュー」をあげて喜ばれたんだったけれども、やはりそれでは芸がないわね。今度どこかに行く時は、折り紙の一つも持って行こうかな。

朝早かったので、列車での後半は私も三人のご家族もほとんど寝ていた。大連に着くと丁度昼時で、飲茶の店で昼食を取ったが、ここも美味しかった。二日目の雪花ビール一本が飲めなかったので、同席した老ご夫婦に飲んで頂いたのだが、この日はお返しにコップ一杯注いで下さった。それで充分の量だった。

同じテーブルではなかったが、昔満鉄で勤めていたというご高齢の男性参加者が、それが誇りだと言っておられるのが聞こえ、やっぱりそういう方もいらっしゃるので滅多なことは言えないなと思った。うちの母だって何を思って満州に来てみたかったのか、その時代を生きた人でないと、今の私たちの価値基準だけで軍国的とかなんとか非難することはできないのである。

昼食後はバスで市内観光。大連の駅周辺は中山広場という大きな公園があり、中年女性達が祭りか何かで踊るのか、一生懸命練習をしていた。太極拳をしていた人たちはあまり見かけなかったが、体操や踊りをしているグループは幾つもあった。

それから、当初のツアー行程にはなかったが、ガイドさんがリクエストを取って、最近漸く開放されたばかりの旅順港に立ち寄ることになった。展望台の最上階に着くと、そこのガイドさんがここからの眺めや港の歴史について説明してくれた。大変流暢な日本語である。それが終わるとやはりこの方も、特産品だという鮑(あわび)から採れる真珠の加工品の売り子となって、熱心にワタシに勧めるのであった。土産の話はまた別のエントリで書こうと思うが、ここでは結局、貝殻を加工したアクセサリを三つ買った。

次は、段通絨毯をはじめとして色々な民芸品を売っている店に入る。男性陣のほとんどは買い物をせず、中国茶の試飲コーナーに座って話をしておられたが、私はここで同僚方への土産として扇子を買おうと最初から思っていた。売っていたのは絹のものだったが、一扇いくらかと訊くと80元と言われたので、はぁ〜それではとても予算に合わない、日本での土産物のパンフレットでは500円ぐらいで売っていましたよというと、何本要るのかと訊かれた。結構な本数だったので、それではその値段で良いと言われ、買った。ちなみに、当初一万円しか両替していなかったので、二日目の夜に更に一万円、ガイドさんに両替してもらっていた。いずれにしろ随分いい加減な値段設定で、最終的に売れればいくらでも良さそうである。後で他の方達にも伺ったところでは、値段はあってないようなものだった。

それから、中国茶の店に行く。色んなお茶を試飲しながら、最終的には買わされるワケだが、中国式の本格的ないれ方で飲むのは久し振りだったので面白かった。ここでは体に良さそうな渋みのある一葉茶(200元)と、友人への土産にジャスミン茶を買った。ジャスミン茶の方は日本円で買ったような気がする。2000円ほどだったか。

夕食は海鮮料理で、これも美味しかった。旅を通して訪れたレストランはどこも美味しかったが、昔ながらの手をかけた中国料理ではなく、なんだかモダンな味で、自分でも作れそうな感じのものが多かったし、味に統一感があったような気がする。多分、ガイドさんの味の趣味なんだろう。どの店もまずまず美味しいが、とびきり美味しいワケではない。毎食後ガイドさんがバスの中で、「美味しかったですか?」と訊くのだが、皆さん一様に「まぁまぁ」と言われた。ホントにその通りなんだから仕方がないし、そんなものなのだろうと思う。それでもツアーの値段からすると、贅沢過ぎるくらいだ。

一旦ホテルに戻ってから、希望者は大連の雜技団公演を見に行ったのだが、これについてはまた明日書こうと思う。