ダービー

最近は全く競馬を見ていないのだけど、テレビで今回最有力馬に騎乗するという福永ゆういちの番組を見て興味深かったので、久し振りにダービーを見ることにした。

福永君のお父さんはその昔「天才ジョッキー」として名高い人だったらしいが、私が競馬を知ったのは彼がもう引退した後なので特別な思い入れがあるワケではない。でも、そのお父さんとほぼ同世代のジョッキーには好きな人が何人かいて、彼らや武ユタカがゆういち君のことをとても気にかけていたから、それなりの興味はあった。デビュー戦もテレビで見て印象に残っているが、素人目にもヘタクソな騎乗で、デビュー戦ってこんなもんなのかなぁと思って可笑しかった。その彼も今やリーディングを争うほどになっているというから、月日の経つのは早いものだ。

番組ではゆういち君の生活振りやダービーに懸ける気持ちを追うとともに、別の有力馬に乗る、地方競馬から中央に進出して来たライバルの岩田ジョッキーと食事をしながらの対談もあった。岩田さんはいかにも地方から上がってきた無骨さがあり、今度こそダービージョッキーになれるのではないかと目されているゆういちを持ち上げながらも、いやいや内心すごく自信がありそうで侮れないなと思った。

パドックで周回するゆういち君の馬を見て、前の番組で最後の追い切りをかけた彼が「とても雰囲気がいい」と言っていたけれど、今日はいまいちパッとしないなぁと思った。尤も、名馬中の名馬ディープインパクトの子というだけあって、G1取れます的な顔はしている。G1を取るような馬は、なんというか独特の気品があって賢そうな顔をしているのだ。

しかし今回はそれより、二番人気になっている「母の父がメジロマックイーン」だという芦毛の馬の方が落ち着いていて良さそうだ。騎手も申し分なさそうだし成績も一番いいのにゆういち君の馬の方が人気になっているのは、ああいう番組があったり、今度こそ彼がダービージョッキーになるのではと期待されているからだろう。が、そういう思い入れを予想に反映させるとロクなことはないと、これまでの経験から知っている。ここは冷静に見なくては(あ、馬券は買ってません。予想だけ)。

三番人気の岩田さんの馬は、彼が言ってたように折り合いが難しそうなウルサイ様子を見せていた。私の記憶では、パドックで気合いが乗り過ぎていたり「折り合いが鍵」などと言われている馬が勝つことはあまりない。

他の馬では、結果的に今回2着になった11番の馬が目を惹いたので連に絡むのかもとは思ったが、私は勝ち馬一頭を当てることにしか興味がないので、勝つのは芦毛の6番だろうと予想した。ゆういちの馬は後方から差すことも可能とのことだったが、6番は好位(少し前の方)につけそうだったからだ。いくら強い馬でも、後方から差して勝つ確率は高くない。

レースが始まって大方の位置が定まると、もう勝敗は決まったようなものだった。ゆういちの馬も芦毛も後方過ぎる。好位置につけた三番人気の岩田さんの馬が勝つんだろうな、と思った。

果たして結果は、岩田さんの勝利だった。万感の思いが溢れて泣いていた岩田さんの姿を見て、もらい泣きしそうだった。もし、あの番組を見ていなかったらそんな思い入れもなかったかも知れないけれど、やっぱり現時点では岩田さんの方が一枚上手なのだろうなと思った。岩田さんの馬もディープインパクトの子で、そういえば一番人気がコケると、代わりに同じ親の別の馬が勝つことが不思議とよくあることを思い出した。

競馬ってやっぱり面白い。レースを見るだけでなく、ちょっとした前番組を見ていると更に楽しみが倍増する。ダービーぐらいは毎年見て、いつかゆういち君がダービージョッキーになるのを見届けたいなと思った。