『太陽』を見た。

というほど、実は最後まで真面目に見れなかった。イッセー尾形の演技がチト過剰な気がする。多分、舞台で見たら面白いのだろうし決して嫌いな俳優さんではないのだけれど、この映画ではどうかと思う。おまけに最後に桃井かおりが出てきて、皇后だと。あり得ない。こんな風に「作り上げる」演技って好きじゃない。別に監督は、昭和天皇を揶揄しようと思って作ったわけじゃないだろうに。

映画はともかく、ワタシ個人としては普段から皇室の方達には強い憐憫…ぢゃないな、同情…でもないな、なんだろ、とにかくお気の毒な方達だな、という気持ちが強い。生まれた時から「人として」生きることを許されず、己の意志で行動する事ができない環境。考えただけでゾッとする。

昭和天皇の戦争責任問題にしても、勿論責任はないとは言わないが、お気の毒だったという思いも強い。

ただ、この映画の科白の中でもよく使われていた「あっ、そ」という昭和天皇の口癖(?)を、いつだったかテレビで聞いた時の不快さを思い出した。戦後間もない頃に、天皇が戦災にあった人びとを慰問(視察か)した時の映像だった。あんな頃だったから、天皇に自分たちがあの戦争で被った害を訴えるなんて、恐れを知らぬ行為だったに違いない。それでもその人は訴えた。自分が家族を、家を、あの戦争で一瞬にして失ったことを、天皇に直接。
その答えが、あの呆気ない「あっ、そ」の一言だったのである。なんだろこの人!と怒りの念が生じた。

そんなことを思い出させてくれたという意味では、イッセーの演技も、やはり有効だったのかも。彼はきっと、あの映像を見ていたんだな。