更なる不思議

昨日はさんざん迷った挙げ句、最終的には常識的で「正しい」道を行くことにした。まぁ、分かっていたことだけど。でもそれは単に、そっちの方が楽だからだったのかも知れない。そうも思った。

いずれにしろスッキリした気分でとある病院に行くと、これまでの人生で最後に好きになった人に遭った。互いにマスクをしていたので最初は気づかなかったけれど、彼だった。数年前、最後に遭った時は気まずい思いをしたものだったが、私が仕事でテキパキと(?)他の人と話しているのを脇から見て、尊重してくれているような気配がした。事前に渡してあった書類を見て、私がいつか訪ねて行くことを知っていたのかも知れない。

気づいた時には彼は消えていたが、その後、ある人の病室を訪ねて行くと、彼がこちらに背を向けて、その人に話しかけていた。声は昔より低く落ち着いていた。彼も少し歳を取ったのだ。私は咄嗟に部屋の外に出た。今日ならあまり拘らずに話しかけれそうな気もしたけれど、結局中には入れなかった。

私は数ヶ月に一度、なぜか黒目の外側の方の白目が真っ赤になる時がある。一昨日辺りからそれが始まっていた。ヘアダイも褪せて、染め直そうと思っていた矢先だった。仕事なのだからそんなことは気にせずに話すべきだったのかも知れないけれど、いやらしくもそんなオンナの部分が、部屋の中に入る勇気を挫いた。暫く外で待ったあと、時間を稼ごうとトイレに入った。その後、もしまだ彼がいたら何事もなかったように挨拶をして話そうと思い病室に入ったが、もう彼はいなかった。

どうして今日に限って彼に遭ったのだろう。あの病院に行けば会う可能性は高いのだから、退院後の一年ぐらいはいつも気を張っていた。最近では気にしなくなっていたのに、突然にこれだ。

昨日今日とこんなことが続くと、偶然は必然であるなどと何事も宿命のように昔は思ったものだ。でも今回は、自分はもしかしたら他の惑星の人のテレビゲームか何かの一駒で、いいように操られているのではないか、と思えて来た。「ふ〜ん、このオバさんはAの正しい道を選んだんだな。じゃあご褒美に、好きだった人に会わせてあげちゃおう!」なんつって。

そんなことを思いながら帰りの車を運転していると、職場に近い場所で、昔付き合っていた男性が運転する車とすれ違った。いや、その人は東京に住んでいるからこんなところですれ違うわけがなく、単にそっくりさんだったんだろう。でも、びっくりした。

私はちょっと疲れているのかも知れない。あるいは、天中殺かなにかか、と思った。いずれにしろ、暫く慎重に過ごした方が良さそうだ。