そろそろ仙台の話を

書いておかないと忘れそうだ。

今回は職能団体ではなく、完全に個人の立場で行った。なぜなら職能団体で行った調査はとても非効率で、また必ずしもワレワレの団体が行わなくても良いのでは、という気もしたのだ。実際、同じような調査を地元の学生がしていたとも聞いたし。それでもまた要請が度々あれば行かざるを得ないかなとは思っていたのだが、その後一度だけ呼びかけがあり、二度目はなかったので人数が足りたのだろうと思って応募しなかった。

また、二度目の避難所での支援については、もうそろそろ避難所の方達が自立の方向に向かった方が良い時期だろうと思った。ボランティアがあれこれ世話を焼き過ぎて、地元の方々のやる気をそいでしまっているのではないかと思われる場面がそこここに見られたからだ。もし自分が避難生活をしていたら、これくらいは自分たちでやるだろうということが、なされていなかった。勿論、何もかも失って何をすれば良いか途方に暮れている時期が長かったのだろうとは思う。また、慣れない避難所生活で、やろうと思ってもどこまでやれば良いのか迷いもあったのかも知れない。それにしても・・・と正直思った。そういう意見は既に他からも聞かれたらしく、私が行った避難所では住民の自治への移行が既に決定し、実際に始まろうとしていたところだった。

そんなワケで、人からは「(何度も行って)エライですねぇ!」とか言われるのだが、実は行っても行っても満足感が得られないというのが何度も行く理由だ。だから今度は個人で、泥だしでも瓦礫集めでもなんでもやります、という気持ちだった。本当はまた石巻に行って、どのくらい復興したのか追跡してみたい気持ちもあったのだが、石巻では県外のボランティアは団体でしか受け入れておらず、個人の受け入れが可能な仙台のボランティアセンターに行ってみた。

行きは今回も夜行バスだったのだが、ボラセンまでのバスは始発でも集合時間の8時半には間に合わない時刻だったので、仕方なくまたタクシーで行くことになった。仙台から25分ぐらいの所にある岡田という地区までの車窓からは、これといった大きな被害の爪痕は見られなかった。

ボラセンには一番乗りだったが、泊まり込みで世話をしている方々が一人、また一人と受付や作業の準備を始めた。その後、50〜60代ぐらいのボランティアの男性が二人ほど来られたが、やはり名古屋だの大阪だのからの遠征組だった。また地元の定年早々の方は、週に4日は参加しておられるとのことだった。そうする内に、20数人程度の人が集まり、作業毎にグループ割りをされた。泥だし作業隊は力仕事中心だったからか、男性ばかりで出掛けて行った。私は東京からの20代の男性二人と地元の50代前半ぐらいの女性と一緒に、自転車で5分ぐらいの所にある個人のお宅の草刈り作業を仰せつかった。正直、ここまで来て草刈りかよとは思ったが、目的は草を刈ることではなく刈った後でしか拾えない瓦礫の欠片を拾い集めることなので文句は言えない。

向かった先の周辺は新興住宅が立ち並んでいて、もう津波の爪痕は見えなかったが、このお宅だけ時間が止まったような状態だった。幸いコンクリート建てなので屋台骨は丸ごと残っているのだが、一階部分は天井まで津波が押し寄せたらしくガラス戸がことごとく破れており、中もメタメタのままだった。その中で仏壇だけが、新品なのか磨かれて甦ったのか、ピッカピカな状態で置かれてあった。

それにしても広大な庭を擁する大邸宅で、家の前の庭だけでも500坪は下らないのではなかろうか(他に畑とおぼしき地面もあった)。鎌と手で庭の草を皆黙々と刈り始めた。途中、二人の若い女性も加わったが、こてこての関西弁だった。昼食におにぎり一個食べたが、近くにトイレがなく、このお宅のトイレも使えなさそうだったのでボラセンまで戻ってトイレを借りたり、自販機で飲み物を買ったりした。この日はかなり暑い日で、持参したお茶だけでは間に合わなかったのだ。午後からはまた3人程加わって作業を再開したが、やってもやっても庭は広くまた草も深いため、終了時刻の16時になっても「綺麗に完了!」とまでは行かなかった。

草を取り除いた後で、このお宅から出たものなのか流れ着いたのか分からないが、ガラスや陶器、プラスチックなどの欠片や、小型犬か猫のものと思われる白骨などを拾い集めた。村上春樹の『土の中の彼女の小さな犬』という短編を思い出した。

帰りは、別の作業をしていた男性ボランティアの車に何人か同乗させてもらって仙台駅に着いた。昼少し前におにぎり一個しか食べなかったせいかお腹が結構空いていて、駅から3分程のところにあるホテルへの通りがかりに見かけたサンドイッチのイートインで、美味しそうなハムやらチキンやらが挟まれたパンを食べた。美味しかった。

ホテルではすぐに風呂に入り、なにかテレビを見たかな・・そうそう久し振りに東方神起の二人を見れたのでラッキー!と思ったんだった。二人でも充分カッコ良かった。その後、また出掛けるつもりだったのだが、やはり疲れていたのか、ちょっとうたた寝のつもりが、結局そのまま朝まで眠ってしまった。