二日目の朝は

8時半に原町駅前までボラセンの車で迎えに来てもらえるということだったので、頼んでいた。私の他に一人、今は別の所に住んでいるけれど元は東北出身という中年女性が乗り合わせ、運転するのは少し前から活動に入っていた、これもボランティアの中年男性の方。ちなみに、朝は迎えに来てもらえるが、帰りは各自でホテルなり、ボラセンが無料で提供してくれる施設に戻ることになっている。

集合場所にはすでに、自衛隊の人や一般の人、合わせて120人ぐらい集まって、エラい人の話を聞いておられた。連休なので、いつもより沢山来た様子。後から来る団体もいたようなので、最終的にその日は150人ぐらい集まったのではないかと思う。そこで10数名ずつのグループに割り振られ、瓦礫撤去や草刈りにと、用具を準備してから数台の車に分乗して向かう。

私は、ブロック塀壊しのグループに入ったのだが、メンバーの半分は外人さんだった。リーダー格の人が60歳ぐらいの、多分ファイナンス関係の重役かなんかしてるアメリカの人。通訳の日本人女性を二人連れて来ていた。あとはアメリカの20代女性二人、うち一人は南相馬の英語学校で教えているとのこと。他に、ドイツやニュージーランド、英国、オランダ等から若い男性が一人ずつ、あとは、多分アメリカからの60代前半の男性などで、日本人は私と、長期でボランティア活動をしている40代ぐらいの男性二人、短期の30代?の女性一人(と通訳の女性二人)ぐらい。

個人のお宅の庭(と畑)での活動だったのだが、ここは少し高台に位置しており、津波の被害ではなく地震そのもののせいで庭のブロック塀がほとんど崩れていた。壊れ切れなかった塀をハンマーで割って処分し、また畑作ができるようにするというのがこの日のミッション。ハンマーで割るのは勿論男性の仕事で、他の者は列を作ってブロックを次々に手渡してトラックに積み、トラックには4人ぐらい乗って集積所に捨てに行く。少し小さめのブロックは一輪車に積んでおいて、それをまたトラックに乗せて捨てる。

和風ではあるがコンクリート造りのため、塀は別として外から見た限りでは家屋に損傷はなさそうだった。それなのに、原発に近いことと、インフラが整備されていないせいで住めないというのは、歯がゆいことだろうなと思った。リーダー格の人が放射能計測器を計りながらの作業だったけれど、普通の温泉場より低い濃度だという。それでも、たまに来るのではなくて毎日住むとなると問題になる量なのだろう。

休憩時間に、一時帰宅されていた家主さんが気を遣ってペットボトルのお茶やらアクエリアスやら、500mlの飲み物を一人二本ずつ出してくれた。自分たちでも勿論飲み物は持っていくのだけれど、残暑厳しい日だったので、特に午後の一本は直ぐに飲み切れた。ボーッとしていると、ニュージーランドの20代後半ぐらいの男性が話しかけて来てくれた。南相馬へは仕事で来ている。富山にも行ったことがある。地名を忘れていたようだけど、どうも宇奈月温泉らしかった。私は反対側の山の麓の方だというと、ちょっと残念そうだった。この人と話すまで、私には外人さんというと皆同じに見えるのだけれど(まぁ、つぶさに見ると違いは確かに分かる気がするけれども)、あの人はドイツから、この人はエゲレスから、と教えてくれた。よくよく見ると、一人残らずイケメンだった。本当に。60代のリーダーがそもそも格好良かった。そして、外人さんのボランティアは気軽というか、ごく当たり前のように動いているのが良いと思った。ボランティアがごくごく普通のこととして浸透しているのだと思う。

夕方4時頃までに活動を終えてボラセンに戻ると、朝、駅から送ってくれた人が、ついでだからホテルまで送ってくれると言ってくれ、朝のもう一人の女性と一緒にまた送ってもらった。その方(運転していた人)は、全国的なNPOボランティア組織の一員で、明日は午前中だけ活動して帰るとのことだった。女性の方は、今日ホテルで泊まって翌早朝に帰るとのこと。

9月初めにはホテルの予約が一日分しか取れず、二日目は無料の宿舎に泊まる予定で寝袋も持参していたのだが、前日にホテルにキャンセルが出たと聞き、急遽泊まることにした。無料宿舎は21時に消灯だが、土曜だったのでしやがれをどうしても見たいと思ったのである。そうすれば疲れも吹き飛ぶだろう、と。

夕食はホテルの定食を頼んでおいたのだが、これが豪華というか、肉あり鰹の刺身ありでボリューム満点。普段は滅多に残さないけど、さすがに食べ切れないほどだった。

それから部屋に戻ってテレビを見ていたが、いつもの時間になっても「しやがれ」をやらない。まさか、こっちではやってないのか?と焦ったが、なんと秋の番組改編時期で、全国的にしやがれがないではありませんか!これにはガックリ来た。

仕方がなく、そうそう前日からアラフェスが始まっているから、もしやスポーツ新聞に記事が載っていないかとコンビニに行き、二誌も買ってみたけど一誌にしか載っていなかった。しかも、そう大々的でもなく。

とほほと思いながらも、まっいいかと早めにベッドに就いた。