三日目の夜は

お腹も大丈夫だったとは言え、ホテルでディナーという気にはならず、すぐ近くにスーパーマーケットがあると聞いたので、そこで何か買って部屋で食べようと思い、出掛けて行った。

外国のスーパーはワンパックが大きいと聞いていたが、やはりそうだった。パンを少し買って食べようと思ったが、食べ切れないほど入ったパックしかないのでやめて、元の職場の同僚達にあげるためのチョコレートや、我が家用にバルサミコ酢などを買っただけで、夕食はマーケット内にあるピザ屋で済ませることにした。

ピザ屋さんはコックとレジ係の二人でやっていて、いずれも気の強そうな中年女性である。添乗員がバスの中で、イタリアは女性上位で、男性は皆尻に敷かれているようだと言っていたが、確かにそんな感じである。とくに、ピザを焼いている女性の方は、どこかに行ってしまった男性店員らしき人の名前を、叱りつけるような大声てずっと呼んでいた。レジには私より先に何人か客が並んでおり、私の一つ前には中年女性が並んでいたのだが、ウノ・・なんちゃらと言っていたのでイタリア人かと思ったが、よく聞くとスペイン語のようで、言葉の分からない同士が、お互いに時々肩をすくめながら注文のやり取りをしていた。

ピザのサイズが大きいので、私は1/4分と飲み物とフライドポテトのセットになっているのを注文したつもりだった。店の前の写真には、確かにこの3点セットで3.99ユーロになっているように見えたのである。しかし、レジの女性は、フライドポテトは別料金で1ユーロだと言う。いささか納得が行かなかったが、別にポテトが食べたいわけでもなかったので、飲み物とピザだけにした。レジの女性の表情を見ると、騙されたのではなく、多分広告の写真が分かり辛いためだったのだろう。

ピザが焼けるのが遅く、10分ほどすると先に注文したスペイン女性がもの凄い剣幕でレジのイタリア女性に喰ってかかりだした。お、面白い!スペイン女性とイタリア女性、果たしてどちらが強いのかと興味津々で見守っていたが、まぁ、客の強みもあったかと思うが、結局スペインの勝ちで、他の客の分よりも先に注文の品を出してもらっていたようであった。私は、「いつもニコニコと我慢強い日本人女性」の典型のように、ジッとピザが出て来るのを待っていたが、最後にはサスガに痺れを切らして、ピザを焼いている方のスタンドに行ってみた。レジ係の人は、遅くなってごめんなさいね的なことを言っているようだったので、そこでも穏やかに、「どういたしまして」といった風情を保っていた。なにしろここでは「日本代表」なのである。

しかし、散々待たされた挙げ句に出てきたピザは、お世辞にも旨いとは言えないシロモノであった。第一、トマトソースの他に、トッピングらしきものが殆ど乗っていない。コーラで流し込むように食べたあと、早々にホテルに戻った。

前日までのホテルはバスタブ付きであったが、ここのホテルはシャワーだけで、しかもシャワーヘッドが固定されていたので洗いにくかった。ちなみに、トイレの横にはどこでもビデ用の水洗台座が置かれているのだが、使い方がまるで分からない。添乗員もバスの中でそのことに触れていたが、やはり使い方が分からないので触らない方がいい、と言っていた。

テレビはいつも報道番組かドラマで、イタリア語が分からないためCNNばかり見ていた。キプロス問題が大きく扱われており、そのせいで両替店の毎日のレートが一日で10円も15円も違ってるのかぁ、と思った。

毎日歩き回るのでホテルに戻る頃にはいつも足先が火照っており、シャワーを浴びて上がるとすぐに眠たくなる。そして、真夜中の3時前後に目が覚める、そんな日々だった。