大連での足裏マッサージ

今回のツアーのオプションは二つあって、一つはこの足裏(または全身)マッサージ、もう一つは雑技団だった。

これまで色んなツアーパンフを見たり、実際にアジアを旅した人達の話を聞くにつけても、マッサージだのエステだのをしてきたというのは正直感心しなかった。これまでの歴史を見ても、日本は中国だの韓国に対してロクなことをして来ていないのである。ワタシが今回の旅行先をわざわざ旧満州に選んだのは、前述したような理由もあるが、もう一つは、これまで他国を蹂躙して来た祖先を持つ私どもに対して、現地の人たちがどれくらいの反感を抱いているのか確かめるため、と言ってもいいくらいだった。

帰国翌日にたまたま電話をくれた友人に大連に行って来たと話すと、「アナタまた何でわざわざそんな反感持たれるに決まっているような所に行ったの?私なら絶対に避けたいわ。やっぱりアナタは変わってる」と言われてしまった。「やっぱり」というのがイササカ気に掛かるし、ワタシから見たらこの友人の方がよっぽど変わっているのだが、まぁそれは置いといて、普通はそういうもんなんだろうな。そして、そんな国でマッサージという跪いて受けるようなサービスは、いかにも優越感に満ちたもののような気がして、なんとなく嫌だったのだ。

とはいえ、足裏マッサージそのものは、確か以前宿題くんで大野くんが受けて痛がっていたので、一体どれくらい痛いものか興味があった。また現地ガイドが、「ここのマッサージはきちんとした専門教育を受けたプライドを持った人達で、日本語も大体分かる」という説明をしていて、ツアーだとあまり現地の人と話す機会がなさそうなため、これはいいチャンスだなと思い、やってもらうことにした。料金は日本円で3000円である。

ホテルに戻ってシャワーを浴び、ホテルのバスローブを着たが、あまりにも厚手のリッパなもので暑苦しく、自分で持って来た寝間着代わりのロングTシャツに着替えた。テレビを点けると、あれ、なんていうタイトルだっけな、グレン・クローズとかジョン・マルコヴィッチとかミシェル・ファイファーが出てる昔の貴族の映画をやっていた。しばらくするとドアをノックする音がして、若い女性マッサージ師がやってきた。

手で私の足にクリームをたっぷりつけてマッサージをしながら、大体は日本語と、ごくごく簡単な英語をチャンポンしながら話した。

年齢は23歳。客の大半は日本人。自分はハルビン出身で両親はハルビンにいるが、二人共病気であまり働けない。お母さんは病気で仕事はしていない。お父さんは短時間しか働いていない。子供は私一人(そうだ、一人っ子政策だもんね)。「兄弟は欲しくない?」の質問には、兄弟がいるということの想像ができないのか、理解できないようだった。ハルビンは寒くて冬はマイナス20度ぐらいになるけれど、スケートができるからいい。大連には直通の飛行機で来れる。マッサージの仕事は12時間ずつ交代でやっているが、休みはないほど仕事は豊富にあり、稼げるので両親を養える。ボーイフレンドがいて、マッサージ学校で知り合った。日本人にもマッサージ師の友達が3人いる。日本ではマッサージをする人は、中年の人とか目の見えない人が多いというが本当か?体力が要るのに…と不思議な顔。

少し話し始めた頃、どういうキッカケだったかは忘れたが、私が「昔は私たちの国の人が、とんでもないことをして行ったわね。ごめんなさいね」というと、うん、と頷いていた。その表情の中には、やはりなにか、日本人に対して割り切れない感情があることが窺えた。

マッサージは気持ち良かったが、ほとんど痛くなかった。私は土踏まずにしこりがなく、大変健康だということだった。しこりのある人はすごく痛がるのだという。ということは、智くんはどっか悪いのか?まぁとにかく、ワタシは健康の太鼓判を押された。

たっぷり一時間近くマッサージをしてもらった後、一人になると急に睡魔が訪れて来て、大連での一日目は終わった。