大連の雜技団公演は

客席が200ぐらいしかない小さな劇場で行われた。大連京劇団劇場という、かつて東本願寺の本堂だったという所である。中国で一番有名なのは上海雑技団だと思うが、もっともっと大きな会場で客も沢山入るらしい。この日の入りは、せいぜい30名ほどだった。なんだか、どさ回りの芝居を見に来たようである。

事前にガイドさんから、「雜技」の合間にモデルのようにスタイルの良い、「ミス・ユニバース大会にでも出そうな」地元のお姉さんたちが出て来て、ファッションショーではないが綺麗な衣装を見せてくれるとは聞いていた。でも実際に見ると、まぁその説明はそんなに間違ってはいないものの、なぜ彼女たちが雜技の合間に出て来るのかという謎には、一切答えは出なかった。なんなのこれ?っていう感じ。なんというか、雜技が素晴らしいだけに、「女は綺麗でスタイルさえ良ければ、芸なんてなくていいんだ」と言っているような、正直言って、見ていてちょっとイラッと来るようなシロモノだった。

それに較べ雜技団の演技は、たとえ出演者が五人だけという侘しさであっても、芸は一流だった。これまでテレビで何度か中国雜技団の芸を見たことがあり、その度に「なにもソコまでしなくても…」と思って来たが、この日見た一人一人の芸もまさにそうだった。特に、最初に出た6歳ぐらいの小さい男の子が、細長い木製のブロックをどんどん積み重ねて(横にではない、縦にである)、その上で倒立していくのを見せられたヒにゃあ、この子はここに至るまでどんな訓練を強いられて来たのであろうと思うと、ナミダが出そうだった。

二人目の女の子は、その男の子より更に小さかった。体の柔らかさを、これでもかと見せつける例のヤヤ気持ち悪い芸である。さっきの男の子がサポート役で時々登場するのだが、きっと兄弟みたいにして過ごして来たんだろうな。

二十歳そこそこと思える男子二人の芸の内、一人はバレーボールぐらいの大きさのボールを、口に銜えた木の棒の上で操ったり投げてもらって受けたりするもので、それもエラく難しそうだった。

ハイティーンぐらいの女性は、細い金属のフラフープを使った芸だった。この人が小さいコ達のお姉さんか母親代わりで面倒見てるのかななんて、芸を見ながらつい考えてしまう。

なんか中国の芸って、素晴らしいんだけど、つい裏事情ばかり考えてしまって、心の底からは楽しめない感じがしたなぁ。