花道の横で歌舞伎

を見るのは初めてだった。これまではせいぜい二階席か三階。上から見下ろす歌舞伎の舞台というのも、それはそれで非常に面白かった。ただ、一度は桟敷か花道近くでも見てみたいとも思っていたので、今回たまたま花道横の席が取れたのはやはり僥倖だった。今回の演目は『春の寿』『菅原伝授手習鑑』『京鹿子娘道成寺』『与話情浮名横櫛』。

歌舞伎を観に行くと大抵は着物姿の人を見かけるけれど、まだ一月だったせいか、いつにも増して着物姿の人が多かった。きっと、「お着物で歌舞伎を見る会」なんて催しでもあったのかなぁ。

間近に勘三郎福助を見て楽しい事は楽しかったが、「これが大野くんだったら…」などと不謹慎な思いがチラッと頭を掠めたのも確か。一度でもいいから大野くんに歌舞伎とか日本舞踊とか、やってみて欲しいのよねぇ。

昼間はン十年ぶりに銀ブラ歩行者天国なんて、ほんとに久し振りだなぁ。今回の宿は小伝馬町だったので、羽田から京急で東銀座まで行って日比谷線に乗り換える必要があった。チェックインまで時間があったので、東銀座から銀座の大通りまで歩いてみたんだけれど、なんと途中でWINSがあったんですね。そういえば昔、東武ホテルで友人が結婚披露宴をした時だったか、このWINSで馬券買って大当たりしたことを思い出し、つい千円だけ久し振りに買ってみた。だってあの時は三千円を元手に、一時は十一万円余まで払い戻し、調子に乗ってやってたら最終的には五万ぐらいに減ったんだけれど、旅費代が浮いたのでそれでも大満足だったのだ。

まだ5レース目が終わった所という時間帯で、スポーツ誌とどちらにしようか迷った挙げ句、久し振りに競馬新聞を買ったが、もう450円もするんですね。中山の6レースを馬連で2点だけ買って、レースまで時間があったので近くの店で安い天丼を食べてから、すずらん通りを目指した。そう、○乃子であんみつを食べるのである。

着いてみるといつになく、昼食時にもかかわらず店は空いていた。○乃子あんみつを注文すると、すぐにそれは出て来た。こんなに早く注文した物が出て来るのも珍しいが、あまりにも早いと逆に嬉しくないわね。最初っから用意してあったんじゃないか、という気もしてきて。

いつも通り黒蜜をかけて食べたのだけれど、なんだか甘ったるい。最初、これは蜜をかけすぎたかなと思ったが、そうではなかった。豆自体が甘く煮てあるのだ。ここの豆の和菓子は昔から甘いのだが、あの甘さの豆があんみつにも乗っかっている。もう、ガッカリである。

伝票を見ると、裏に客の意見を書いて良いことになっていた。ワタシはこう見えても、あまりこういうものにイケンを書かないニンゲンである。しかし、この時ばかりは書いた。「甘過ぎて、途中で食べるのを止めようかと思った」と。だって本当なんだもん。こんな「ご意見」が今後に生かされるか否か、それは分からない。それを確かめにまた行くかどうかも、正直分からない。さよなら、ワタシの○乃子。そんな気分だった。

○乃子を出て新橋方面に、昔バイトしていたジャズクラブがあったビルはどうなっているのかな、と思いながら歩いて行った。あまり良く憶えていなかったので、途中で「あれ、この駐車場になってるところだっけ?」と思ったけれど、もう少し先に行くと、そのビルはまだ残っていた。ビルの名前を見たら思い出したのだ。そうか、そういえばこんなに新橋寄りだったんだっけと、もう少し歩いて博品館まで行って漸く思い出した。なんせ40年近く前のことだものねぇ。

懐かしい場所を色々巡りながら、また東銀座方面へと戻って行った。馬券を買ったレースは終わっており、二匹目のどじょうはいなかった。軸は取ってたんだけど、ヒモがね…(って、専門用語?ですみません。要するに、片方しか当たらなかったってことです)。でもまぁ、競馬しに来たワケではないので、千円でおしまいにして、少し早いけれどホテルに行くことにした。