バレンタインデーの翌日だったので

どう?末娘さんなんか、誰かにチョコレートあげた?と訊いてみた。

「いやぁ最近は逆チョコとか言って、男の子から貰ってたわ。部活の後輩で一人、うちの娘に公然と『好きです』って言う子がいて。年賀状も来たんだけど、ハガキだから親も見るかも知れないって分かってるだろうに『愛してます』とか書いてくるような子なのよ。

だけどその子、母ひとり子ひとりの家庭で、どうも拒食症らしいの。部活後の宴会なんかに行って何か食べても、すぐに席を立ってトイレで吐くらしい。毎回そうなんだって」。

聞けばその男子は、今の若い人達は知らないかも知れないけれど私たちの世代なら大抵は知っているとある有名人の息子さんだった。そして、彼の母親が開催しているちょっと社会的な問題を扱う会合などに、お姑さんが亡くなって時間的な余裕が少しできた私の友も、参加するようになったのだと言う。

「彼の母親はすごく実行力があって、本当に感心するの。でも、例えば教育問題なんかについても話合ってても、内心、それより拒食症の息子さんを先ずなんとかしなくていいのかしら、って思ってしまう。父親がいなくて、母親は仕事で飛び回っていて、やっぱり相当ストレスがあるんじゃない?

娘の方はそろそろ就活で大変。文系だし、選べる時代じゃないの。好きな楽器を続けたいから、そういう活動ができそうな会社をあちこち受けてるみたい。

でも親って、就職についてのアドバイスなんて案外出来ないのよね。したところで、聞いちゃいないって感じなんじゃない?自分がそうだったもの。友達の意見の方が影響力あった。そういえばアナタ、私が保育の仕事か旅行会社かで悩んで相談した時に、『あなたは旅行ね』って言って、私その一言で決めたのよ」。

え〜っ!?私、そんなこと言ったっけ?旦那さまを決める際に、品定めしてくれって言われてバイト先に見に行って、「いいんじゃない?」って言ったのは憶えてるけど。

「言ったわよ。若い時の仕事選びなんてそんなもんよ。迷ってるなんて言ったって世の中知らないんだもの、友達の無責任な直感に自分の人生預けたりするのよね」。

いやはやビックリである。でも、そういえば私も、この友に相談して離婚を決めたのだったけれど、彼女はもしかしたら、そんなこと憶えてないのかもなあ。