東京から帰って来て

もう五日も経つというのに、ようやく疲れが取れたというところである。トシは取りたくないものだ。今回マイッタのは靴擦れと、そこから来たと思われる筋肉痛で、靴といっても皮のスニーカーだったのだけれど、これが数年前確か大阪だか京都に行った時に間に合わせで買ったもの。その時も靴擦れで、スニーカーなら大丈夫だろうと思って買ったのに、なぜか中側の丁度外反母趾気味のところがゴツゴツと当たって、皮が剥けてしまったのだ。

家を発つ時から雨だったけれど、東京に着いても降っていた。当初は土曜に発って一泊する予定だったけれど、土曜に仕事が出来てしまい、ホテルをキャンセルして土曜深夜の高速バスに乗った。ちなみに今回のイデタチは、黄色のTシャツにジーンズもどきのスカート、ブルーのトルコ石をあしらった指輪(誕生祝いに姉達からもらった)、黄色の革ベルトの時計など、全体に大宮カラーである。

東京には6時過ぎに着いて、10時過ぎに”はとバス”で靖国神社と国会議事堂に行く予定なのだけれど、朝食は築地で鮨を食べようと、地下鉄で築地に。前回上京した時には仕事の電話があり、せっかくの鮨がゆっくり味わえなかったウラミがあったからだ。あの時は、築地では早朝から鮨屋が営業しているんだなぁと思っていたが、早朝からどころか24時間営業のチェーン店がいくつも開いていた。さすがだ。客の入りが良い店の方がネタが新鮮なのだろうとも思ったけれど、なんだかあまり人の多いところに行きたくない気分でもあり、比較的静かな店に入ってみた。

ワタシは日頃、決して口が贅沢な方ではないと思うのだが、鮨に関してだけは金のかかるネタが好きである。姉達と行く回転寿しでは、うにだのトロだのを思い切り…というワケには行かないので、一人で鮨屋に入るときは存分に好きなネタで食べる。今回もイキナリ中トロから入り、鯛だのカニだのうにだの、心置きなく注文していた。途中で「赤イカ」を注文すると、イヤに肉厚のものが出て来た。不審に思って職人さんに、「これ、赤イカですか?紋甲イカみたいだけど」と尋ねると、赤イカは、私の地方ではアオリイカと同じものだけれど、東京のほうではこの肉厚のイカのことを言い、地方地方により呼び名が違うとのことだった。

そんな話から始まり、職人さんは問わず語りに、築地の市場が豊洲に移転したら観光客が減って、市場周辺にある自分らの店も大打撃になる。市場そのものは東京都のものだが、周辺の店はそれぞれの私費で移転しなければならない。そんなお金はないから、色んなイベントを考えたりしながら生き残りを賭けている、といったことを話してくれた。一見の客相手に朝からそんな話が出るところをみると、余程不安が増していたのだろう。

しかし、生き残れる方法は只一つ。美味しい鮨を握ること、それに尽きる。鮨さえ美味ければ、築地だろうと新宿だろうと生き残れるのだ。その店の鮨も悪くはないが、もっと美味い鮨屋は沢山ある。今後はゼヒ正攻法でサバイバルして頂きたい。

勿論、そんなことは言わずに「美味しかったです。ごちそうさま」と店を出た。結構贅沢に注文したと思ったが、一貫ずつだったのでお代は2000円ちょっとと思ったよりずっと安かった。

はとバスにはまだ少し時間があったので、駅に向かう途中で築地本願寺に立ち寄った。といっても、なにしろ歴史パー子であるからしてソコがどんなにありがたいところかも知らなかったのだが、置いてあったパンフレットを見ると、ああやはり運命の引き合わせ、父方の宗派である浄土真宗の本山こそ、ここ築地本願寺なのであった。

あいにく本堂は改修工事中とのことで、どなた様か分からぬが掛け軸がかかっていたダケだったが、先に入ったお方が賽銭を投げてその掛け軸様を拝んでいたので、右に倣っておいた。参拝したい人は仮本堂へということだったが、行ってみるとヤヤ場違いな感じだったので、そっと立ち去った。